「仕事と家庭の両立」をテーマにしたとき、よく話題に上がるのは育児に関するものですが、それと同じように我々の生活と切っても切り離せない関係にあるものが「家族の介護」です。
今回は、介護を行う方の働き方に着目した『両立支援等助成金 介護離職防止支援コース』についてお届けします。
主に
①休業取得時
②職場復帰時
③介護両立支援制度
④各種加算制度について
の4部構成となっており、本記事では①の休業取得時について解説していきます。
介護休業制度を整備するきっかけになれば幸いです!
これからの時代、さらに注目されていくであろう助成金。ぜひ最後までご覧ください。
- 介護離職を防止したい
- 働きやすい職場環境をつくりたい
- 介護休業制度を整備したい
介護休業制度とは?
まず、本助成金を解説する上で欠かせない、介護休業について簡単に触れていきます。
介護休業制度とは、労働者が要介護状態にある対象家族の介護をするために休業を取得できる制度です。
ただし、パートアルバイトなどの有期雇用のうち一定の方、また会社で労使協定により対象外の労働者を定めている場合(入社1年未満等)は、介護休業の対象とならない場合があります。
休業できる日数は介護の対象となる家族一人につき通算93日、最大で3回まで分割して取得することが可能です。
要介護状態とは、2週間以上にわたり常時介護が必要な状態
次に、介護の対象となる家族ついてみていきましょう。家族の範囲と状態がポイントです。
- 配偶者 (事実婚を含む)
- 父母
- 子
- 配偶者の父母
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態
上記に該当する家族を介護する場合、介護休業制度を利用できる可能性が高いです。
そんな制度があるなんて知らなかった!
実は知らないだけで制度を利用できる人は多いのかもしれません。
両立支援等助成金 介護離職防止支援コースとは
両立支援等助成金 介護離職防止支援コースは、「介護支援プラン」に基づき労働者の円滑な介護休業の取得及び復帰に取り組んだ場合や、介護の両立支援制度を導入・利用した場合に受給できる助成金です。
申請区分は次の4つが用意されています。
- 休業取得時
- 職場復帰時
- 介護両立支援制度
- 新型コロナウイルス感染症対応特例
このほか、一定の要件を満たせば助成額に加算される場合があります。
介護離職防止支援コースの解説図
※④の新型コロナウイルス感染症対応特例は、都合により割愛しています。
制度の目的:介護支援制度の利用促進を通じて、介護離職を防止する
厚生労働省の統計資料『令和4年就業構造基本調査』によれば、介護しながら働く方が365万人。
「介護・看護のため」に離職した方は1年間で10.6万人にのぼります。
介護をしながら働く方についてみると、2017年から2022年にかけては18万人の増加、離職者数も0.7万人増加しており、高齢化を背景とした介護需要の増加が窺えます。
退職する前に介護休業制度は利用したのかな?
それがあまり活用されてないみたいです。
東京商工リサーチの介護離職に関するアンケート調査では、介護離職者の54.5%が介護休業や休暇などの制度を利用していなかったとしています。
介護支援制度の定着遅れが介護離職を生んでいる…というわけですね。
こうした背景から、介護支援制度の利用を促進して介護離職を防止するために本コースが創設されました。
【図解】介護離職防止支援コース(休業取得時)の全体像
申請の流れ
介護離職防止支援コース(休業取得時)は、介護休業制度をより活用できるものにするため、いくつかの準備事項があります。
1.周知する
「介護支援プランにより労働者の介護休業等取得・職場復帰を支援する」という方針を周知します。(介護支援プランについては後述します。)
周知の方法は就業規則や社内報などの手段がありますが、育児介護休業規程で定めておくのがおすすめです。
社内報や掲示は手軽に行うことができる反面、制度としては風化しやすいもの。
助成金申請を行う場合は就業規則の整備も必須になります。対象労働者の休業開始前に、介護休業制度及び所定労働時間の短縮等の措置を労働協約または就業規則に定めていることという要件もありますので、育児介護休業規程の作成・適宜修正がベストです。
両立支援の一環として、育児と介護あわせて計画的に行う旨を規定しておきましょう。
▼就業規則の規定例
会社は、育児休業または介護休業等の取得を希望する労働者に対して、円滑な取得及び職場復帰を支援するために、当該労働者毎に育休復帰支援プランまたは介護支援プランを作成し、同プランに基づく措置を実施する。なお、同プランに基づく措置は、業務の整理・引き継ぎに係る支援、育児休業中または介護休業中の職場に関する情報及び資料の提供など、育児休業または介護休業等を取得する労働者との面談により把握したニーズに合わせて定め、これを実施する。
厚生労働省「両立支援等助成金 支給申請の手引き」
就業規則への規定例(育休復帰支援プランと一体的に規定する場合の例)
いつまでにやったほうがいいの…?
原則は介護休業開始日の前日までとなっています。
例外的に、介護休業期間中でもよいことになっていますが、労務管理を整えてから制度を実施するのが望ましいと思います。そのためまず就業規則等の整備に取り組み、並行して以下の面談やプラン作成を行うのがおすすめです。
2.面談する
対象労働者と休業制度利用時の業務体制や引継ぎ方法などについて面談を行います。
面談内容は「面談シート」に記録しておきましょう。厚生労働省のHPに様式が公表されています。
3.介護支援プランを策定する
面談の内容から、会社としてどのように支援していくかを「介護支援プラン」として策定します。
様式は、厚生労働省の場合面談シートと兼用になっていますのでそちらで問題ありません。
難しいのは、ただプランを作成するだけでなく“助成金の要件に合致させなければならない”ということです。
介護支援プランのつくり方は別記事で紹介しますね!
4.引継ぎを行う
介護支援プランに基づき、引継ぎを行います。
介護支援プラン策定前や面談前に引継ぎを行うと、助成金の対象外となってしまうので注意してください。
なかなかここまでの準備が大変だね…
初めは大変ですよね。流用できる部分は多いので2人目以降は楽になると思います。
5.介護休業を合計5日以上取得する
介護休業の初日から1年以内に合計5日以上、介護休業の取得が必要です。
この5日間は所定労働日をカウントするので、休日は含めません。
土日休みの会社の場合、木~月までの休業を行ったとしても助成金上の介護休業取得日数は3日ということになります。
6.支給申請
対象となる介護休業取得日数が合計5日(所定労働日に対する休業日数)を経過する日の翌日から2か月以内に支給申請を行います。
そのため、例えば90日の介護休業中だった場合、休業期間中に支給申請期限が終了してしまうことになります。
介護休業後ではなく「合計5日(所定労働日に対する休業日数)を経過する日の翌日」が支給申請の起算日であることに注意してください。
介護離職防止支援コース(休業取得時)の支給額
介護離職防止支援コース(休業取得時)の支給額は30万円です。これに一定の要件を満たすと15万円が加算されます(個別周知・環境整備加算)。
支給額 | ||
---|---|---|
休業取得時 | 30万 円 | |
個別周知・環境整備加算 | 15万円 | |
1年度 5人まで |
その他、職場復帰時と介護両立支援制度の実施であわせて90万円以上受給できる可能性があります。
支給申請書類
支給申請に必要な書類リストです。
✔ | 書類名 |
---|---|
□ | 支給申請書(【介】様式第1号①②) |
□ | 支給要件確認申立書 |
□ | 面談シート兼介護支援プラン |
□ | 周知したこと、周知日が確認できる書類 |
□ | 就業規則、関連する労使協定 |
□ | 対象労働者の雇用契約書等 |
□ | 対象労働者の介護休業申出書 |
□ | 対象労働者の出勤簿等 |
□ | 対象労働者の賃金台帳 |
□ | 企業カレンダー、 シフト制勤務の場合は勤務シフト表 |
□ | 介護保険被保険者証 医師等が交付する証明書類 など |
□ | ※初めて助成金を申請する場合 支払方法・受取人住所届 支払口座が確認できる通帳等の写し |
まとめ
介護による離職は当人にはどうすることもできない状況が多くあると思います。
会社が手を差し伸べることで、会社と労働者双方がメリットを享受し、介護離職による社会の損失を防ぐ一手になるはずです。
介護休業制度を上手に活用して働きやすい職場環境づくりを行い、人材定着率UPに繋げていきましょう。
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