共働き世帯の増加に伴い、ワークライフバランスの重要性が叫ばれて久しい昨今ですが、こうした“仕事と家庭の両立”を後押しする助成金制度があるのをご存じでしょうか。
両立支援等助成金は、職業生活と家庭生活が両立できる“職場環境づくり”を行う事業主を支援する制度です。
今回は、両立支援等助成金の主なコース4つ
- 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
- 介護離職防止支援コース
- 育児休業等支援コース
- 不妊治療両立支援コース
について、詳しくみていきましょう。
- 両立支援等助成金の概要がわかる
- 自社に合った両立支援制度が見つかる
- 職場環境づくりに役立つ
両立支援等助成金の特徴
両立支援等助成金は、
- 中小企業(個人事業主等を含む)のみ対象
- 事業所ではなく『事業主』単位で支給される
- 取組実施の時系列が特に重要
などの特徴があります。
特徴1:中小事業主のみ対象
中小企業の範囲は、以下の表で①または②に該当するか否かによって確認できます。
※個人事業主等、資本金がない場合は『常時雇用する労働者数』で判定。
特徴2:事業主単位で支給
申請は『事業主』単位のため、たくさんの支店があっても会社ごとに支給申請することになります。
特徴3:取組実施の時系列が重要
両立支援等助成金は、取組実施の時系列が特に重要です。詳しくはのちほど解説しますが、少しでも実施日が前後すると助成金の要件不該当で、受給できないということが起こり得ます。
全体像の図解から、進行のイメージを掴みましょう!
(図解は随時更新予定)
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
出生時両立支援コースは、男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境整備等を行い、育児休業を取得した場合に支給される助成コースです。第1種と第2種があります。
第1種 | 男性労働者が育児休業を取得した場合 |
第2種 | 男性の育休取得率が上昇した場合 |
第1種:男性労働者が育児休業を取得した場合
第1種(男性労働者が育児休業を取得した場合)の主な要件は以下のとおりです。
- 雇用環境整備の措置(※)を複数行っていること
- 業務の見直しに係る規定を策定し、業務体制の整備をしていること
- 子の出生後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得したこと
※雇用環境整備の措置とは、育児・介護休業法に定めるものをいい、育児休業に関する「研修の実施」「相談体制の整備」「事例の収集・提供」「方針の周知」が挙げられます。
支給額は通常支給のほか、育児休業取得にあたり代替要員を確保した場合、育児休業に関する情報を公表した場合は加算を受けられます。
第1種支給額 | |
---|---|
支給額 | 20万円 |
代替要員加算 | 20万円 ※3人以上確保した場合45万円 |
育児休業等に関する 情報公表加算 | 2万円 |
※育児休業等に関する情報公表加算については後述します。
第2種:男性の育休取得率が上昇した場合
第2種(男性の育休取得率が上昇した場合)の主な要件は以下のとおりです。
- 第1種の助成金を受給していること
- 第1種の申請から3事業年度以内に、男性の育児休業取得率が30ポイント以上上昇していること
- (第1種の申請後、当該対象者を除き)育児休業を取得した男性労働者が2名以上いること
第2種の支給額は、第1種受給後の育児休業取得率によって異なります。
第2種支給額 | |
---|---|
1事業年度以内に30ポイント以上上昇した場合 | 60万円 |
2事業年度以内に30ポイント以上上昇した(または連続70%以上)場合 | 40万円 |
3事業年度以内に30ポイント以上上昇した(または連続70%以上)場合 | 20万円 |
第2種は不確定要素が強い。。該当したらラッキーくらいの心持ちでいいと思います。
ご参考:第1種の全体像
介護離職防止支援コース
介護離職防止支援コースは、介護離職を防止するため『介護支援プラン』を策定し、介護休業の円滑な取得・復帰に取り組んだ以下のような場合に支給される助成コースです。
A介護休業 | 休業取得時 | 5日以上休業を取得した場合 |
職場復帰時 | 原職復帰後3カ月以上継続雇用した場合 | |
B介護両立支援制度 | 介護と仕事の両立支援制度を利用させた場合 |
主な要件、支給額は次のとおりです。
支給額/主な要件 | ||
---|---|---|
A 休業取得時 | 30万円 | |
・適切に介護支援プランを作成し周知する ・プランに基づき業務の引継ぎを行う ・対象労働者が合計5日(所定労働日)以上の介護休業を取得する | ||
A 職場復帰時 | 30万円 | |
・休業取得時を受給している同一労働者である ・原職等に復帰し、雇用保険被保険者として3カ月以上継続雇用する | ||
新規雇用 | 20万円 | |
手当支給等 | 5万円 | |
・代替要員を新規雇用または周辺社員に業務をカバーさせ手当を支給する | ||
B 介護両立支援制度 | 30万円 | |
・適切に介護支援プランを作成し周知すること ・介護両立支援制度(※)を対象労働者が原則合計20日以上利用すること | ||
個別周知・環境整備加算 | 15万円 | |
・労働者に対して介護休業に関する制度説明を行う等 |
※介護両立支援制度とは、育児・介護休業法を上回る措置をいい、次のようなものがあります。
所定外労働の制限制度 | 介護のための在宅勤務制度 |
時差出勤制度 | 法を上回る介護休暇制度 |
深夜業の制限制度 | 介護のためのフレックスタイム制度 |
短時間勤務制度 | 介護サービス費用補助制度 |
介護にかかる負担軽減の施策として、会社に導入しやすい制度から検討してみるのはいかがでしょうか。
介護支援プランについて
『介護支援プラン』に関しては、厚生労働省より策定マニュアルが公開されています。
ただ、プランを正しく作成するだけでなく助成金の要件に合致させなければなりません。
難しいと感じたら無理をせず、お近くの社労士に相談してみてくださいね‥!
育児休業等支援コース
育児休業等支援コースは、『育休復帰支援プラン』を策定し、育児休業の円滑な取得・復帰に取り組んだ以下のような場合に支給される助成コースです。
育休取得時 | 3カ月以上育児休業を取得した場合 |
職場復帰時 | 原職復帰後6ヶ月以上継続雇用した場合 |
業務代替支援 | 代替要員の新規雇用または周辺社員に手当を支給した場合 |
職場復帰後支援 | 職場復帰直後の両立支援に取り組む場合 |
主な要件、支給額は次のとおりです。
支給額/主な要件 | |||
---|---|---|---|
育休取得時 | 30万円 | ||
・適切に育休復帰支援プランを作成し周知する ・プランに基づき業務の引継ぎを行う ・対象労働者が連続3か月以上の育児休業を取得する | |||
職場復帰時 | 30万円 | ||
・育休取得時を受給している同一労働者である ・原職等に復帰し、雇用保険被保険者として6カ月以上継続雇用する | |||
業務代替支援 | 新規雇用 | 50万円 | |
手当支給等 | 10万円 | ||
・代替要員を新規雇用または周辺社員に業務をカバーさせ手当を支給する | |||
職場復帰後支援 | 30万円 | ||
子の看護休暇制度 | 1,000円×時間 | ||
保育サービス費用補助制度 | 実費×2/3 | ||
・育児・介護休業法を上回る上記制度を導入し、一定の利用実績がある | |||
育児休業等に関する情報公表加算 | 2万円 |
育児休業等に関する情報公表加算について
令和5年度から、自社の育児休業の取得状況
- 男性の育児休業等取得率
- 女性の育児休業取得率
- 男女別の育児休業取得日数
を「両立支援のひろば」サイト上で公表した場合に支給額を加算されることとなりました。
『出生時両立支援コース』『育児休業等支援コース』の申請時に適用されていますが、コースごとに1回まで対象となります。
不妊治療両立支援コース
不妊治療両立支援コースは、『不妊治療両立支援プラン』を策定し、不妊治療と仕事との両立に資する以下のような取り組みを行った場合に支給される助成コースです。
A 環境整備、休暇の取得等 | 休暇制度等を合計5日(回)利用した場合 |
B 長期休暇の加算 | 不妊治療休暇を20日以上連続して取得した場合 |
不妊治療を経験した方のうち16%(男女計(女性は23%))が、不妊治療と仕事を両立できずに離職しています。
職場への定着を図り、働きやすい環境を整えるために有効な助成制度として、令和4年に新設されました。
主な要件、支給額は次のとおりです。
支給額/主な要件 | |||
---|---|---|---|
A 環境整備 休暇の取得等 | 30万円 | ||
・両立支援のための事前準備を行う ・適切に不妊治療両立支援プランを作成する ・両立支援制度を合計5日(回)利用する | |||
B 長期休暇の加算 | 30万円 | ||
・環境整備、休暇の取得等を受給している ・不妊治療休暇を20日以上連続して取得する |
ご参考:環境整備、休暇の取得等の全体像
【まとめ】
仕事と家庭の両立を会社が推し進めることで、働きやすい職場環境をつくることができます。
その結果、介護や育児に伴う離職が低下し、職場定着率が向上すれば人材育成にも取り組みやすいなど好循環を生み出すことにも繋がります。
今回ご紹介した4つの制度
- 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
- 介護離職防止支援コース
- 育児休業等支援コース
- 不妊治療両立支援コース
自社に導入可能か、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
※2023年9月15日現在、各コースの図解や詳細記事のリンクがない部分については、作成でき次第追加予定です。
当サイトでは図解でわかりやすく、役立つ助成金情報をお伝えしていきますので、随時チェックしてくださいね!