キャリアアップ助成金は、助成金のなかで最もメジャーで取り組みやすい助成金のひとつです。
しかし、年々要件が追加され厳格化傾向にあるため、内容はしっかり確認しておく必要があります。
今回は、令和5年度最新のキャリアアップ助成金の各コース6つについて
- 概要
- 主な要件
- 支給額
- 申請の注意点
を中心にみていきましょう。
- キャリアアップ助成金の概要がわかる
- 自社にあった制度が見つかる
- 申請で注意するポイントをつかめる
キャリアアップ助成金の特徴
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者に対して企業内でのキャリアアップを支援するため、取り組みを実施した事業主に対して助成金を支給することで労働者の雇用の安定、処遇の改善を推進するための制度です。
誰に対して | 非正規雇用労働者 |
何をする | 職務上の地位や賃金などの処遇改善 |
趣旨・効果 | 労働者の雇用の安定 労働者の意欲・能力向上 優秀な人材の確保 等 |
対象となる事業主(全コース共通)
全コース共通で対象となる事業主の主な要件は次のとおりです。
- 雇用保険適用事業所の事業主
- キャリアアップ管理者を置いている※
- キャリアアップ計画認定を受けた※
- 労働条件、勤務状況、賃金の支払い状況、賃金の算出方法を明らかにすることができる
- キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ
※雇用保険適用事業所ごとに必要。
要件に当てはまれば、個人事業主も対象になりますよ!
逆に、次の要件に該当したら対象になりません。
- 支給申請の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない
- 支給申請日の前日から過去1年間に、労働関係法令の違反を行った
- 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う
- 暴力団と関わりがある
- 暴力主義的破壊活動を行った、または行う恐れがある団体等に属している
- 支給申請日、または支給決定日の時点で倒産している
- 支給決定時に、雇用保険適用事業所の事業主でない
キャリアアップ助成金のコース全体像
令和5年度のキャリアアップ助成金には6つのコースがあります。
『正社員化支援』は取り組みが就業規則制度規程後の”正社員化”であることに対し、『処遇改善支援』は取り組みが”就業規則への規定等”であることが大きな違いです。
それでは早速、各コースについてみていきましょう。
正社員化コース
正社員化コースは、有期雇用または無期雇用労働者を正社員に転換することで受けられる助成コースです。
正社員転換によって『賃金を3%以上UP』のほか正社員に『賞与または退職金制度があること』、『昇給制度があること』も必要です。
支給額(中小企業の場合)は図にあるとおりですが、大企業の場合は有期⇒正規で42万7500円、無期⇒正規で21万3750円になります。
派遣社員や母子家庭の母等、一定の要件に該当する場合は加算もありますよ。
申請の注意点
正社員化コースでは、
- 以前業務委託として依頼していた者を対象にするのはNG
- 正社員にする旨を約束して雇用するのはNG
- 転換方法等を就業規則に規定し、そのとおり実行すること(書類は保管)
- 賃金3%以上UPは慎重に確認すること
などの注意点があります。
転換の方法や申請の流れ、そのほかの注意点等はこちらの記事でまとめていますので、ぜひ確認してみてください。
障害者正社員化コース
障害者正社員化コースは、障害のある有期雇用または無期雇用労働者を正社員等に転換することで受けられる助成コースです。障害者の職場定着を主な目的としています。
正社員転換によって『賃金が減額していないこと』のほか正社員に『賞与または退職金制度があること』、『昇給制度があること』が必要です。
支給額は次のとおり。
申請の注意点
障がい者正社員化コースでは、
- 6ヶ月毎の支給申請のため、通常の正社員化コースとは支給申請期限が異なる
- 正社員にする旨を約束して雇用するのはNG
- 転換方法等を就業規則に規定し、そのとおり実行すること(書類は保管)
などの注意点があります。
賃金規定等改定コース
賃金規定等改定コースは、有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を適用させた
場合に受けられる助成コースです。
雇用形態別、職種別、部門別等のような区分で増額することもできます!
支給額は、中小企業は図のとおりで、大企業は賃上げ率3%~5%未満は3万3千円、5%以上は4万3千円となっています。職務評価制度を導入した場合、1事業所あたり15万円~20万円の加算もあります。
申請の注意点
賃金規定等改定コースでは、
- 増額対象者を限定する場合、就業規則等でその区分を明確にしておくこと
- 最低賃金の引上げに伴う改定でないこと
などの注意点があります。
賃金規定等共通化コース
賃金規定等共通化コースは、すべての有期雇用労働者等に関して、正社員と賃金テーブル等を共通化した場合に受けられる助成コースです。
同一労働同一賃金を実現しようとする助成金です。
支給額は、中小企業は60万円、大企業は45万円となっています。
賃金テーブル?等級とは?イメージ図で解説
賃金テーブルとは、簡単にいうと賃金を決めるための表です。
例えば、職務の難易度に応じて6等級にわけるとします。同じ職務内容の等級に当てはまる労働者について、賃金テーブルの表に則って、同じ賃金を支給するようなイメージです。
申請の注意点
賃金規定等共通化コースでは、
- 原則、助成金の対象者以外もすべての者が賃金テーブルに該当すること
- 賃金テーブルが適用されるための合理的な条件を明確化しておくこと
などの注意点があります。
賞与・退職金制度導入コース
賞与・退職金制度導入コースは、すべての有期雇用労働者等に関して、賞与・退職金制度を新たに設け、支給または積立てを実施した場合に受けられる助成コースです。
主な要件は、賞与の場合は5万円以上の支給、退職金の場合は1万8千円以上の積立をすること。
あくまで助成金の要件なので、例えば賞与は次年度以降、会社(業績等)によって自由に金額を決定できます。
支給額は、中小企業は図のとおりで、大企業は賞与または退職金どちらかの導入で30万円、どちらも導入で42万6000円となっています。
申請の注意点
賞与・退職金制度導入コースでは、
- 就業規則等に制度を規定した日ではなく、実際の支給または積立日から6ヶ月後の申請になる
- すでに賞与制度を一部の非正規雇用対象に導入(就業規則に規定)している場合は対象外
などの注意点があります。
短時間労働者労働時間延長コース
短時間労働者労働時間延長コースは、有期雇用労働者等を対象に、週所定労働時間を延長し新たに社会保険の被保険者とした場合に受けられる助成コースです。
週所定労働時間を3時間以上延長した場合は賃金増額しなくても支給対象になるのに対し、1時間以上2時間未満の場合は賃金10%以上、2時間以上3時間未満の場合は賃金6%以上の増額が必要になります。
申請の注意点
短時間労働者労働時間延長コースでは、
- 社会保険の被保険者にならなければ、労働時間を延長しても対象外
- 増額は基本給とすること
などの注意点があります。